今週のコラム
第21回 「子供の『自己肯定感』を高める」 渡邊和起
日本の子供は、諸外国と比べて自尊感情が低いと言われています。自分の存在を肯定的に捉える感覚が乏しいというのです。私の経験を振り返ってみると、同じようなことを感じたことがありました。前任校で担任をしていた6年生の子供たちに、体育の学習で実態調査を行ったところ、「自分はチームのためになっていると感じますか」という項目に、「はい」と答えたのは半数程度でした。また、別の学校で同じような実態調査を行ったときにも、似たような回答結果だったように思います。これらのことから、私は子供たちに対し、自分の動きがチームのためになっていることに気付かせたい、プレイに貢献したことを自覚し、自分のことを肯定的に感じさせたい、と考えるようになりました。
このような子供の実態に対し、国立教育政策研究所は、『生徒指導リーフ Leaf.18』の中で、「日本では(中略)自尊感情よりも自己有用感の育成を目指す方が適当」だと指摘しています。自己有用感とは、「他人の役に立った、他人に喜んでもらえた」等の感覚のことです。更に、自尊感情の要素に自己有用感があることがわかり、「自己有用感の獲得が自尊感情の獲得につながることは、容易に想像できる」とも説明しています。
子供が、友達と関わりながら思考・判断をして技術・戦術の習得をする体育の特性と、この指摘を合わせて考えると、体育は自己有用感を高めることに適した教科といえるのではないでしょうか。